ドライブにCD挿入してiTunesで「インポート」。普通はこれで十分ですけど、それで飽き足らない音楽フリークにもそれなりの理由があるようです。そこで今回は、そんなこだわり派も満足できる楽曲デジ化の正攻法をご紹介します。
...と本題に入るその前に「なんでそんな七面倒臭いことしなきゃならんの?」という理由をいくつか。
iTunesを使えばエンコードは普通にできます。A地点(CD)からB地点(コンピュータ)、C地点(MP3プレーヤー)、D地点(バックアップドライブ)に手間暇かけずに移動はできるんですけど、タグ付けに一貫性がなかったり、アップル端末以外でアルバムアートが見れなかったり、ベストなロスレスの楽曲フォーマットやMP3エンコードオプションに対応してなかったり、贅沢言い出すと足りないところもあるようです。こういうのは本人が気にする/しないに関わらずサポートしてるに越したことないですもんね。
関連: 「iTunesを使ってMP3にエンコードした音は悪い?」(2005年の記事ですが)
要は、ちゃんとリッピングするにはiTunesやWindows Media playerでできること以上にケアが必要だということ。これは人に有料で頼めるけど、そんなのバカバカしいし第一お金がもったいないですよね。自力でできるし、そんなに難しくないんですよ。
手順を見てみましょう。
iTunes脱却の第1歩はiTunes離れ=他のソフトを入れること。選ぶならエンコードの種類がiTunesより豊富で、上質なエンコーダにしましょう。MP3のエンコーダではオープンソースのLAME(レイム)が一番で、これベースのソフトはMacもPCも沢山出回ってますけど、多機能なのは以下の2つです。
Mac OS X: Max
メーカーさんの説明より。:
CDから楽曲を抽出する際、CD本来のサウンドが維持できる柔軟な機能が最大限揃ってます。新品ディスク向けにはエラーコレクション抜きの高速リッパーも。キズありディスクなら、内蔵のComparison Ripper(音声キャッシュのドライブ用)か、cdparanoiaの強力なエラーコレクションもお役立ていただけます。
要するに、エラーも大幅に減らせる上、サウンドクオリティーも素晴らしく、エンコードの種類も豊富だ、と。そこまで種類がなくてもリッピングは上手にできますけど、あって損はないです。また、MAXはファイルコンバーターとしても優れており、取り込んだデータはさまざまな音声フォーマットに変換が可能なんですよ。全然聴かないWMAファイルがそこら中に散らかってる方には、これも見逃せないポイント。
関連: MAXを使い倒す、リッピングソフトウェア Max、Macユーザーの強い味方:リッピングにはMax
Windows: Exact Audio Copy
メーカーさんの説明より。:
Exact Audio Copy(EAC)は、標準のCDとDVD-ROMドライブを使ってオーディオCDからトラックが作成できる、いわゆるオーディオ・グラバーです。他のオーディオ・グラバーとの主な違いは、• 無料(非商用利用の場合)/
• オーディオCDをほぼ完璧に読み取る技術を採用。
• 修正不能なエラーがあれば、どのタイムポジションでその音の歪みが起こっている(可能性がある)か教えてくれるので、メディアプレーヤーなどで簡単に制御できる点、です。
要するに、お金で買える中で最高のエラーコレクションが無料で使える...と。いやマジで、Exact Audio Copyはオーディオ愛好家の間でも評価は絶大で、理由を聞くとなるほど納得なんですよねー。
LAMEエンコーダを先にダウンロードしないと、プログラムのオプションでMP3エンコード機能はオンにできません。ダウンロードはここ(日本語)で問題なくできます。 タグ設定(楽曲情報の取得)もみんな絶対やりたいと思うんですが、これはさらにひと手間(日本語はこことここ)必要。簡単ですけどね...。
関連: Exact Audio Copyのインストールと日本語化及び初期設定、Exact Audio Copy 日本語化パッチ、FAQ、MUSIC PC、vistaでCDリッピング
「む~、もっと簡単なのはないのか!」という方は「CDex」をダウンロードしちゃってください。LAMEのDLLもタギングDBサポートも既に同梱されてますから。Exact Audio Copyほどじゃないけど、結果も上々ですよ。
関連: CDexの使い方、CDexの情報と基本的な使い方、CDexを用いたCD→mp3変換
両プラットフォームとも、自分で決めなきゃならないことが沢山あります。ファイルはどう整理する? どんな名前にする? これらのアプリには、iTunesと違って、こう保存しなきゃいけないというのがなく、みんな自分の好きに決めていいんですね。いろんな保存・整理のオプションは、Preferencesのメニューを開いて簡単に使えますよ。
決めるのは自分次第。
MP3:
・携帯用デバイスで聴くだけ
・曲は完全な状態でアーカイブなんかしなくていい
・オーディオファンが大嫌い
・FLAC(可逆音声圧縮コーデック)もOGG(非可逆圧縮)も違いがわからん
そんなあなたは今のMP3のままでオーケー。
サイズ対サウンド比がもっと優れたフォーマットは他にもありますし、まあ、オープンソースでもないですけど、やはり汎用性、コントロール、エンコーダ選択の幅でMP3に敵うものは(ゼロじゃないにしても)ないですよね。エンコーダさえ正しく設定すれば、MP3でも素晴らしいサウンドは楽しめます。
難しいのは、MP3の最適なビットレートをどうするか。ある時点を超えると、実際の音のクラリティより心理的要因で音質って違って聴こえたりするので自分ひとりの耳で選ぶのは大変です。幸いギズでは一度、最適なビットレートを読者のみなさんの耳で聞き比べてもらってます。その時の集計では「256kbps」を境に音の違いが聞き分けられなくなる人が一番多かったようです。
なので、ここはエンコーダの設定も「256kbps」に合わせますかね。
これは、256kbpsのVBR(variable bitrate:可変ビットレート)より高くはないです(VBRは、必要量に応じてファイル転送の情報量を調整し、最高の...つまり一番遅いエンコードのオプションを選んで、クオリティーを犠牲にすることなくスペースをセーブしてくれるというもの)。誰でも、どんな状況でも、この設定でまず大丈夫かと。あのiTunesのデフォルトの160kbpsのCBR(constant bitrate:固定ビットレート)でリップしたのよりは、絶対こっちがベターです。
FLAC:
・アーカイブ保存が目的
・クオリティーは落としたくない
・どんな些細な劣化も避けたい
そんなこだわり派のあなたはロスレスに。中でも、ソフトウェアとハードウェアのサポートが最も充実しているロスレスのフォーマットはFLACです。残念ながらアップル製品はどれもFLAC対応じゃないんですけど、iTunesに若干小細工加えるだけでFLACは快適に楽しめますよ。
関連: iTunesでWMA/OGG/FLAC形式のファイルを再生・管理する方法、「FLAC」を攻略!、iTunesがFLACに対応する日は来るのか?
FLACの楽曲が素晴らしいのは、他のロスレスのフォーマットにも変換できるところ。音質劣化を回避しながらアップルiPod互換の「Apple Lossless」にも変換できるし、ややこしいトランスコーディングの心配抜きにMP3に圧縮も可能です。「ディスクというブツ抜きのCD」と考えると早いかも。
アルバムジャケット―これもiTunesの苦手分野のひとつです。探してはくれるんですが、iPod以外のプレーヤーに全曲転送した途端、消えちゃうんですよね。どうしてか? というと、iTunesではアルバムアートを本来あるべき楽曲ファイルのID3タグ内ではなく、別のデータベースに保存してるからなんですね。
Mac OSのiTunesで聴いてるなら、Dougの有名なiTunesスクリプトを使えば、MP3ファイルに直接アルバムアートは書き込めます。インストール手順はこうです。
ファイルやフォルダーをインストールするには、ディスクイメージのウィンドウ内からアイテムを自分の[username]/Library/iTunes/Scripts/ フォルダーにドラッグします。「Scripts」という名前のフォルダーがそこになかったら、ひとつ作成し、そこにファイルをドラッグします。 このフォルダー内に置いたAppleScriptsは、iTunesのScriptメニューのリストに出てきます。 .rtf/.rtfd ドキュメンテーションファイルはこの「Scripts」フォルダーにインストールは不要。
ちょっと難しいですかね...他によい方法・ガイドがあったら是非教えてださい!
Windowsのアルバムアート収集・取り込み法についてはLifehackerがここに素晴らしいガイドをまとめてます(英語)。一言にまとめると...? MediaMonkeyをダウンロードして、あとはお任せ。曲をそこにインポートするだけでFreeDBやAmazonから最新タグ拾ってきてくれます。
関連: MP3タグエディタの読者投票ベスト6!、「GimmeSomeTune」でiTunesライブラリをスーパーチャージ、TagScanner
iTunesやWindows Media Playerみたいなアプリは、ファイルにアルバムアートをエンベッドしても、その表示が出てこなかったり、アプリのデータベースから検索するよう促してくる場合もあります。でも大丈夫。これはどちらのプログラムもアルバムアート保存用にプロプリエタリのストレージシステムを使っているから起こる現象であって、ID3タグに保存したアルバムアートがアプリに認識できないからと言って、そこから消えたとか、エンベッドしていけなかったわけじゃ全然ないので。―タグに保存して転送して何ら支障はないです。他のソフト、MP3プレーヤー、長期ストレージのこと考るとアルバムアート保存法として現状これが最も互換性が高く、理に適うメソッドなんですよ。
ま、とにかく以上で...おしまい! これでみなさんも音楽CDから最もピュアで、耳においしい楽曲ファイルが絞り出せますね。CDをその辺に置いても安心、安心。では早速...
他にも便利なコツ、ツール、リンクご存知の方は是非コメントください。米Gizmodo土曜特集「How To」ガイドは読者の声が命です。取り上げてもらいたいトピがございましたら、こちらまでじゃんじゃん(英語で)リクエスト送ってみてくださいね。それではみなさん、ハッピー・リッピング!
John Herrman(原文/satomi)