国内でスマートフォンの普及が本格的に始まってから十年が過ぎようとしている。ハードウェアの性能が向上し、プラットフォームも安定し、チップセットやディスプレイ、カメラなども大きく進化を遂げた。しかし、その一方で、ボディに注目してみると、思いの外、画一的な形状になってしまった感が残る。
かつてのケータイ時代は、ディスプレイが反転したり、カメラが回転したり、ディスプレイとキーボードが分離するなど、ユニークな機種がいくつも登場し、話題となった。スマートフォンも初期の頃は、スライド式のQWERTY配列のキーボードを搭載していたり、二画面ディスプレイの折りたたみデザイン(他メーカーから後継モデルは登場したが……)などが発売されたが、最近はほとんどの機種がフラットな板状のボディに落ち着きつつある。
特に、日本市場の場合、防水や防塵が重視される傾向が強く、これらを実現するためにシンプルな設計が好まれているようだ。グローバル市場でもその傾向は強く、アップルのiPhoneもここ数年で、3.5mmイヤホンマイク端子をなくし、ホームボタンを可動するボタンからハプティクス技術を利用し、押しても可動しないボタンに変更。昨年のiPhone Xではついにホームボタンそのものをなくしてしまった。いずれもコストダウンと堅牢性を考慮しての設計変更だが、本体の個性が失われてしまったという声も少なくない。
今回発売されたOPPO「Find X」は、こうした動きとは逆に、今までにないユニークなメカニズムを搭載することで、新しい端末形状の可能性を示す一台として設計されている。現在、ほとんどのスマートフォンには前面と背面にカメラが搭載されているが、順調に高性能化が進んできた背面のメインカメラに対し、ここ1~2年は自分撮りのニーズが拡大したため、前面のインカメラの性能向上が著しい。ただ、同時にディスプレイの大型化、全画面化が急速に進んでいるため、インカメラをどのようにレイアウトするのかがひとつの課題となっている。
そこで、多くの端末ではディスプレイ上部にノッチ(切り欠き)を設けることで、その部分にインカメラやレシーバー、3D顔認証用のセンサーなどを格納している。ノッチは端末デザインのアクセントとなっている一方で、「欠けているのは美しくない」「映像コンテンツが欠けてしまう」といった声もあり、賛否両論の状態だ。
これに対し、Find Xはインカメラとアウトカメラを内蔵したユニットが必要に応じて、本体からせり出したり、引っ込んだりするという「スライド式ステルス3Dカメラ」というユニークなメカニズムを採用している。カメラアプリを起動すると、本体上部からカメラ部が自動的にせり出し、撮影が終わり、カメラアプリを終了すると、カメラ部は再び本体に格納されるという動きをする。
昨年あたりから、こうしたメカニズムを採用したスマートフォンが登場すると噂されていたが、実際に今年6月にグローバル向けに発表されたときは「まさか、ホントに作るとは……」と、かなり驚かされたことを記憶している。グローバル向けの発表当時は、国内市場への投入は難しいと予想していたが、その後、OPPOは国内で催された他機種の発表の席で、Find Xの国内投入を匂わせるような発言をくり返していた。
そして、今年10月に国内向けの発表会を催し、いよいよ11月から販売が開始されている。製品としてはかなり挑戦的なモデルであり、保守的と言われることが多い日本の市場において、どれだけ支持されるのかは未知数だが、それでも最先端のエポックメイクな製品を投入したOPPOには、日本市場への並々ならぬ意気込みを感じさせる。