きっかけはJAXAでの意見交換会で、日本人宇宙飛行士たちから発せられた「うなぎを宇宙で食べたい」の言葉だったという。3代目である有限会社観光荘 代表取締役の宮澤健氏は、着想から立ち上げまでのストーリーや宇宙食実現までのロードマップを紹介した。
「UNA Galaxy Project」は、うなぎと宇宙、関連性のない2つを結びつけチャレンジすることで世の中を元気で笑顔にすることを目指す。
最初のきっかけは2019年。観光荘本店のある岡谷市出身の自転車冒険家の小口良平氏氏という人がいる。小口氏は講演会で「将来は南極や月面を走破したい」と語っていた。宮澤氏は「いつかそんなことができたらいいな」と一緒に語っていたという。
興味を持った宮澤氏は極地向けのうなぎ蒲焼の開発を調べ始めた。すると長期保存や栄養価、衛生管理、調理工程の容易さなど多くのハードルがあることが分かった。
一方、本業のほうでも、2020年の食品衛生法改正に伴う「HACCP(ハサップ。Hazard Analysis and Critical C ontrol Pointの略。危害分析重要管理点)」義務化への対応に取り組んでいた(2021年6月から施行)。
両者に取り組む中で、どちらも高度な衛生管理が求められるので、極地向け蒲焼も実際の事業と大きくかけ離れたことではないと思うようになった。HACCPがもともと宇宙食の衛生管理のためにNASAが開発した技法だと分かったことも後押しとなった。
最初のきっかけは冒険家との出会い「HACCP」対応が後押しにさらに調査している過程で、JAXAが「宇宙日本食」を公募していることが分かった。エントリーするにはHACCPに準拠した衛生管理に取り組んでいることが必要だった。
日清やローソンのような大手食品会社ばかりだったため、地方飲食店でも参加できるのかどうか懸念を持ちつつ、JAXAに恐る恐る問い合わせてみると、1週間後に電話がかかってきた。地方の飲食店でも申請のための認証条件を満たしていれば参加可能だと分かった。
そこで誘われるまま「宇宙日本食意見交換会」へ参加。東京・日本橋で宇宙開発のリアルな話や、長野県出身の宇宙飛行士である油井亀美也氏から「宇宙でうなぎを食べられたら嬉しい」といった話を直接聞いた。同行スタッフは「うなぎの蒲焼を宇宙に届けようぜ」と盛り上がったという。
ところが決意したものの新型コロナウイルス禍によってそれどころではなくなり、計画は一時休止となった。HACCPのほうは義務化されていることもあり、また顧客の安全を守るためにも非常に有効ということで、2020年は運用レベルでのHACCPへの取り組みを加速させた。