iPhone 7で盛り上がったシルバーウィークも終わり、秋の訪れを感じるこの頃。しばらく放置していたiPad ProをiOS 10にアップデートしてみたところ、日本語入力がいろいろと改善されていることに気付きました。
iPad Pro 9.7インチモデル。iOS 10で日本語入力がだいぶ良くなった。
筆者はいわゆるUS-ASCII配列の英語キーボードを、かれこれ20年ほど使っています。
かつて日本で主流だったPC-98シリーズがAT互換機へと本格的に移行を始めた頃、高校生だった筆者は、将来的にキーボードはUS配列が主流になると予想し、米国から英語キーボードを個人輸入していました。当時愛読していた『月刊アスキー』や『スーパーアスキー』の影響かもしれません。
しかし、その後も日本ではJIS配列が広く使われています。PC業界関係者の話を総合すると、積極的にUS配列を選択する人は10%未満とみられ、選択できるのもMacやThinkPad、VAIOなどに限られています。
Magic KeyboardのJIS配列(上)とUS配列(下)モデル。iOSデバイスではJIS配列の日本語キーボードのほうが使いやすい。
最近ではモバイル用などでUS配列のまま日本で売られるモデルも増えているものの、その認知度は低く、通販サイトのレビューで「記号の配列がおかしい」などと指摘をされているのを見ると悲しい気持ちになります。
アップル純正のiPad Pro用「Smart Keyboard」も、現時点ではUS配列モデルのみ。
こうした英語キーボードを日本語環境で使うために重要なのが、キー配列をカスタマイズできるソフトウェアです。しかしiOSではそうしたカスタマイズが基本的にできないという難点がありました。※なお、macOS Sierraではキー入れ替えソフトの「Karabiner」がまだ対応していないため、アップデートには注意が必要です。
特に筆者が困っていたのが、日本語と英語(あるいは全角と半角)を切り替える方法です。
たとえばMacのJIS配列キーボードでは、スペースキーの左右にある「英数」と「かな」キーで英語と日本語を切り替えることができます。Windowsの「半角/全角」キーのように押すたびに変わるトグル動作ではなく、キーを押すことで入力モードを確定できることが便利なのです。
iOSデバイスで「英数」と「かな」が使える、マイクロソフトのUniversal Mobile Keyboard(日本語版)。
これが気に入った筆者は、英語キーボードのWindows PCやMacでもキー入れ替えができるソフトウェアを利用し、同じ挙動を再現していました。
ところがiOSではこうしたカスタマイズができず、iOS 9ではこの操作が「Command+スペース」から「Ctrl+スペース」に変更されたことも相まって、困難な状況が続いていました。
これに対してiOS 10では、「CapsLock」キーで入力方法を切り替えるという新機能が加わりました。これでサードパーティ製の英語キーボードでも、CapsLockがあれば1ストロークで切り替えができます。
iOS 10ではキーボード設定に「Caps Lockで英字モードと切り替え」などの新機能が加わった。
また、依然としてUS配列しかないiPad Pro用の「Smart Keyboard」でも、左下の言語切り替えキーより押しやすい位置にあるCapsLockが使えるようになります。
理想的にはどんなキーボードでも自由に「英数・かな」方式を使いたいところですが、まずは一歩前進といったところでしょう。
CapsLockでの切り替え機能以外にも、iOS 10の日本語入力は変換時の挙動も改善されており、違和感を覚えることが減っています。
もちろんATOKやGoogle日本語入力に比べると残念な動作は多く、余計な助詞がつきやすいとか、変換候補が文脈を考慮してくれない点はストレスを感じます。
しかし以前なら「MacBookを開いたほうが早い」と思えるレベルだったことに比べると、着実に進歩しています。原稿書きのような本格的な入力作業に耐え得るという、「閾値を超えた」感があります。
常にノートPCを持ち歩いていると、iPad Proを持ち出す機会は減っていき、寝転がって動画を見たり本を読んだりする典型的なiPadの用途にとどまっていました。しかしiOS 10では、iPadとPCの使い分けを改めて見直す価値があると感じています。
実際のところ、この原稿も最初にApple Pencilで構成を書き出し、それを見ながらマイクロソフトの「Universal Mobile Keyboard」でテキストを打ち込んでいます。
初めてiPadだけで原稿を書き上げた。
写真管理やレタッチなどにはPCの力を借りたものの、テキスト部分については筆者として初めて、最初から最後まですべてをiPadで書いた原稿になりました。
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