【香港】中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は自社開発した携帯端末向け基本ソフト(OS)を2日にリリースする。米国サプライヤーへの依存脱却を目指し、スマートフォン用ソフトウエアを巡るグーグルの覇権に挑む試みとなる。
ファーウェイはオンライン限定イベントで、多数の自社スマホ製品に対応するこの新OS「ハーモニーOS」を正式リリースする計画だ。同OSを実装したスマートデバイスも発表する見通し。
ファーウェイの機器は昨年8月以降、米国による一連の制裁措置の対象となり、グーグルの携帯端末向けOS「アンドロイド」のアップデートが打ち切られている。さらに、業界で広く使われているグーグルのスマホ用ソフトパッケージ「グーグル・モバイル・サービシズ(GMS)」へのアクセスも、制裁によって阻止された。
ファーウェイのスマホ販売は1年前に一時、世界トップに立った後、減少に歯止めが掛からなくなっている。同社はこうした中、他の携帯端末業者がハーモニーOSを採用することに期待をつないで売り込みをかけ、アンドロイドの市場独占に真っ向から挑む構えだ。
韓国のサムスン電子や中国の小米(シャオミ)など、アップルを除く世界の主要スマホメーカーはいずれもグーグルのアンドロイドを搭載している。調査会社カナリスによると、中国メーカーは世界の携帯端末市場でシェア57%を占めており、ハーモニーOSがグーグルと肩を並べるOSになれば、乗り換える可能性を秘めている。
だが、ハーモニーOSの採用を説得するのは苦しい闘いになるかもしれない。ソフトウエアデベロッパーの既存ネットワークや何十億人という消費者がアンドロイドのインターフェースに慣れており、アンドロイドはスマホ市場を席巻している。販売されるスマホの10台に8台以上がアンドロイド搭載だ。グーグルの広報担当者からコメントは得られていない。
これまでにグーグルの覇権に挑んだ他社は大した成功を収めていない。サムスンは何年も前に競合OS「Tizen(タイゼン)」をリリースしたが、同社製スマホユーザーの間で普及させることができなかった。マイクロソフトも「ウィンドウズ」OSを搭載したスマホ販売を試みたものの、ほとんど成功しなかった。
世界最大の通信機器メーカーであるファーウェイは、米国製技術への依存引き下げを急ぎ、格安スマホ部門を売却した昨年以降、ソフトウエアへと重点を移している。米政府が昨年8月、ファーウェイによる主力サプライヤーからの半導体購入を阻止したことから、こうした取り組みは緊急性を増している。
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購読ファーウェイの消費者ソフトウエア責任者、ワン・チェングル氏は今年に入り、年内にスマホなどファーウェイ製の端末2億台超および他社製端末1億台超にハーモニーOSをインストールすることが同社の目標だと語っている。
ファーウェイは新OSの見栄えや使い心地についてほとんど詳細を公開していない。ハーモニーOSを発表したのは2019年、中国南部の東莞市で開催した開発者会議の場だった。それ以降、ノートパソコンやパソコン、スマートウオッチなど多様な消費者端末用に展開してきたが、スマホ向けのリリースはこれまで見送られてきた。
ファーウェイは長年、独自のアプリストア「アップギャラリー」向けプログラム開発をデベロッパーに働きかけてきた。同社は既に、アクセスが阻止されたアプリの代替となる複数のアプリを発表している。例えば「ペタルマップ」は「グーグルマップ」に、「ペタルサーチ」はスマホのグーグル検索バーに置き換わるプログラムだ。
新OSはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」や動画共有の「ユーチューブ」、画像共有の「インスタグラム」といった人気アプリについて、ユーザーのアクセスを回復させるものではない。こうしたアプリの多くは以前から、世界最大のスマートフォン市場である中国で利用できない状態になっている。