ファーウェイを退社した蘇氏は、業界最高レベルの自動運転技術を追求していた(写真は同社スマートカー・ソリューションBUのウェブサイトより)
中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の自動運転技術部門のトップを務めた蘇箐氏が、同社を退社していたことがわかった。1月25日、ファーウェイのスマートカー・ソリューションBU(ビジネスユニット)の担当者が、その事実を認めた。
蘇箐氏は、自動運転技術に関する独自の視点や歯に衣着せぬ物言いにより、メディアの注目を集めていた人物だ。例えば2021年4月、上海モーターショーの開幕前夜にファーウェイの自動運転技術のレベルについて質問された際、蘇氏は「それは第三者に回答してもらったほうがいい」と前置きしたうえで、次のように自画自賛した。
「もし自己評価させてもらえるなら、絶対に(ファーウェイが)ナンバーワンだ」
この時、蘇氏はアメリカのテスラの自動運転技術についてもコメントして論議を呼んだ。ファーウェイの自動運転システムには(レベルが異なる)3つのバージョンがあるが、蘇氏はテスラのシステムが「ファーウェイの最も低いレベルのバージョンに近い」と言い放ったのだ。
テスラの自動運転システムは、ユーザーがクルマを購入した後もバージョンアップを通じて機能が改善される仕組みをとる。蘇氏もそれは承知している。だが、テスラのシステムは(車両の周辺状況の把握を)視覚センサーの情報のみに頼る方式であり、蘇氏は「データの品質や多元性が十分でない可能性がある」と切り捨てた。
2021年7月には、蘇氏が出席した自動運転技術のフォーラムでの発言が再び物議を醸した。「ここ数年、テスラの(自動運転システムの)事故率はかなり高い。しかも、1人目を殺してから最近殺した人に至るまで、事故のパターンがそっくりだ」とコメントし、明らかに行きすぎた「殺す」という表現をためらいなく使ったからだ。
蘇氏の言動をそれまで大目に見ていたファーウェイも、この時は(会社として)看過できなくなった。同社はテスラに対する蘇氏の発言が不適切だったと認め、蘇氏を自動運転技術部門のトップから解任した。
その後、ファーウェイの自動運転技術部門からはエンジニアの離職が相次いだ。同社の内情に詳しい人物によれば、蘇氏の解任の背景には(失言癖だけでなく)技術の方向性をめぐる会社との対立があった模様だ。
本記事は「財新」の提供記事です蘇氏は業界最高レベルの自動運転技術の堅持を主張していたが、ファーウェイの経営陣は「コストが高すぎる」と考えていた。蘇氏を個人的によく知る人物によれば、同氏はそれでも最高レベルの技術に固執し、この人物に対して冗談交じりに次のように語っていたという。
「何人にも欠点を指摘されないレベルまで技術を突き詰めたい。それでも残る唯一の欠点は、(コストが)高いということだ」
(財新記者:安麗敏)※原文の配信は1月25日
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