iPhoneなどのポータブルプレーヤーとヘッドフォンを組み合わせた音楽リスニングスタイルで、着実に人気が高まっているのがポータブルタイプのヘッドフォンアンプの併用だ。
ポータブルプレーヤーとヘッドフォンアンプを重箱のように重ねて使っている人の姿を見かけることも増えてきた。今回はそのポータブルヘッドフォンアンプの最新モデルを中心に試してみる。
試聴に使用したシュアの「SE535」。2年前に登場したハイエンドモデルで、現在の実売価格3万7000円前後だ
ヘッドフォンアンプは、その名の通りヘッドフォン専用のアンプのこと。ヘッドフォンはスピーカーに比べれば小出力で音が出るので、通常はポータブルプレーヤーのライン出力(ステレオミニ出力)で問題なく再生が可能。
しかし、業務用ヘッドホンにあるハイインピーダンス仕様のものや、出力音圧レベルが低めのモデルなどの場合、ライン出力に直接つなぐと十分な音量が得られないことがある。
特にiPhoneなどのポータブルデバイスの場合、出力レベルが小さめのものもあるので、能率の低いヘッドフォンを使うならヘッドフォンアンプは欠かせない。それだけでなく、ヘッドフォンの音質をグレードアップするオーディオアクセサリーとして使う人も増えている。
携帯プレーヤーはサイズの小ささもあり、決して良質な音楽信号出力が得られるわけではない。それをヘッドフォンアンプでしっかりと増幅することで、より高音質で楽しめるようにするわけだ。果たして、どのくらいの音質改善効果があるのか?
ちなみに、ヘッドフォンアンプと一口に言っても、バッテリーなどを内蔵し移動中の利用が可能なポータブルタイプと、AC電源などに接続して使う据え置きタイプがある。今回はiPhoneなどでの利用を前提とした特集なのでポータブルタイプに限定して紹介している。
また、ヘッドフォンはシュアの「SE535」を使用している。プレーヤーは前回、前々回と同じく最新のiPod touchだ。音質評価は前回までのヘッドフォンと同じ項目で採点しているが、評価基準は異なる。一応の目安としては★3つが大きな変化なしで、★が増えるほど効果大、★が少なければ影響は少ないと考えていい。
5000円未満で買えてしまうお手軽なiPhone/iPod/iPad用ヘッドフォンアンプ「Fiio E02i」
オヤイデ電気が取り扱う「Fiio E02i」(実売価格4000円前後)は、服などに手軽に取り付けられるクリップ付きのコンパクトなヘッドフォンアンプ。本体サイズは幅23×奥行57×高さ15mm、重量は約27gとなる。
iPhone 5と接続。リモコンなしのヘッドフォンでリモート操作ができる
本体にマイクを内蔵し通話も可能だ
アンプ機能のほかに、マイク/リモコン機能も備えているので、これを使えばリモコン非搭載のヘッドホンでもiPhoneなどで音声通話や再生コントロールができるようになる。
コンパクトサイズに加えて、メタルジャケット仕様のボディーは剛性感が高く、しっかりとした作りになっている。
側面に充電用USB端子を装備する
充電はUSB端子で行ない、充電時間90分で約10時間の連続駆動ができる。また、バイパス機能もあるので充電切れしたときでもリスニングは継続できる。機能としては、オン/オフ式の低音ブースト機能もある。
音質の変化はアニソンやポップスでの低音感が顕著だ。量感が増し、音の厚みが増す。このため、リズムがより力強い印象になるし、ボーカルも張りのあるエネルギッシュな再現となる。
低音ブーストを使わなくても、かなり低音感が増強される。ヘッドフォンアンプ自体が強いキャラクターを持っており、音の聴こえ方がガラリと変わるタイプだ。
ジャズを聴くと、ウッドベースの低音が変化し、ブリっとした鳴りがパワフルになると同時に、弦の振えるような細かな表情も豊かになる。このため、音楽全体が力強く、躍動感のある再現になった。
クラシックでは低音感によるスケール感の増大に加え、弦楽器の細やかな再現のクリアさにも違いがあると感じた。弦の艶が増したような高域のキャラクターも持っているようだ。
どちらかというと、メリハリを効かせたパワフルな再現となる傾向で、もともと元気なキャラクターのヘッドフォンだと、やんちゃになりすぎるかもしれない。低音感をもう少しほしいとか、落ち着いた傾向のサウンドにひと味加えるような使い方がよさそうだ。
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