フィンランドのセキュリティ会社、エフセキュア(F-Secure)は2021年5月21日、クラウドベースの新セキュリティプラットフォーム「F-Secure Elements」を発表した。セキュリティソリューションをエレメント(要素)として自由に組み合わせ、単一コンソールで統合管理できるのが特徴。また、従来の年間ライセンスや月額課金に加えて、新たに従量課金モデルを設定。ビジネスの成長やニーズに合わせて、より柔軟にセキュリティ対策を活用することが可能になるとしている。
F-Secure Elementsはマネージドサービスパートナー向けにも展開予定で、ユーザー企業は自社で運用管理する以外にも、マネージドサービスとして利用することが可能になる。2021年7月1日より既存販売チャネル経由で受注開始予定。価格はオープン。
F-Secure Elementsの構成要素
エフセキュア APAC地域担当 VPのキース・マーティン(Keith Martin)氏、同社 サイバーセキュリティ技術本部 プロダクトマーケティングマネージャーの神田貴雅氏
サイバー攻撃手法が複雑化かつ高度化し、ランサムウェア含む日和見攻撃(Opportunistic Attack、非標的型の無差別攻撃)が激化する昨今、専門知識や人材、予算を十分に確保できない企業は、セキュリティ対策の強化に限界を感じ始めている。
エフセキュア サイバーセキュリティ技術本部でプロダクトマーケティングマネージャーを務める神田貴雅氏は、セキュリティ対策製品の多くは、正しく機能させるには運用監視に多大なリソースが必要であり、「無計画にセキュリティ対策製品を次々導入しても、いずれ運用できずに脅威の侵入、拡大を許してしまう恐れがある」と指摘した。
そうした中で需要が高まっているのが、マネージドセキュリティサービスだ。エフセキュアの調査では、65%の企業は何らかのセキュリティサービスをマネージド型で利用しており、82%はオールインワンセキュリティソリューションを希望。また、53%はサブスクリプション形式の製品購入や機能追加を希望しているという。この調査結果からは、運用管理の負荷、コストの負担を極力抑えつつ、必要な機能を必要な分だけ柔軟に導入できるセキュリティサービスが、今後ますます求められると考えられる。
F-Secure Elementsでは、以下の4つのソリューションをシングルエージェントに統合、提供する。
●F-Secure Elements Endpoint Protection(旧 Protection Service for Business):エンドポイント保護●F-Secure Elements Vulnerabiity Management(旧 F-secure Radar):EDR●F-Secure Elements Endpoint and Response(旧 Rapid Detection & Response):脆弱性管理●F-Secure Elements for Microsoft 365(旧 Cloud Protection for Microsfoft 365)
F-Secure Elementsのソリューション群
それぞれのソリューションは、必要なときに有効化し、不要であれば無効化できる。企業規模や事業の成長に合わせて柔軟に導入できるのがメリットだ。また、セキュリティイベントはソリューション間で共有され、管理ツール「F-Secure Elements Security Center」から依存関係を把握できる。SIEMとの連係もサポートされており、ITインフラ全体の現状を俯瞰しながら、優先すべき対策を素早く実行することが可能だ。
管理ツール「F-Secure Elements Security Center」
料金モデルは、従来の年間ライセンスと月額課金はこれまでどおり利用できるほか、今回新たに従量課金モデル「F-Secure Elements Usage-Based Security」が追加された。月末の利用クライアント台数に基づく課金方式で、翌月請求される。なお、F-Secure Elements Endpoint Protectionは、プレミアム版が従量課金モデルに対応する。
新たに従量課金モデルも追加
また、販売パートナーおよびマネージドサービスパートナー向けに、F-Secure Elementsの付加価値サポートサービスを提供する。技術トレーニングやワークショップ、サービス構築の設計およびサポートのほか、対応が難しいインシデントをエフセキュアのセキュリティコンサルタントへエスカレーションする「Elevate to F-Secure」サービスなどが含まれる。
販売パートナーおよびマネージドサービスパートナー向けのサポートサービス
2020年におけるエフセキュアの業績は、グローバルの総売上高が2.2億ユーロ(約286億円)、調整後EBITDAは3570万ユーロ(約46億4000万円)と好調だった。
注目したいのは、上記の数字に反映されていない「ブッキング数」だ。同社ビジネスは複数年契約が中心で、これら受注は将来の収益を保証し、同社の成長において重要な要素だと、エフセキュア APAC地域担当VPのキース・マーティン氏は述べる。特に日本ではこのブッキング数が多く、2019年の新規事業のブッキング数は約2倍に達している。
2020年は、ヤフーや大手決済サービス事業者がSalesforce環境セキュリティ対策を採用したほか、北海道テレビ放送はAWS環境セキュリティ診断コンサルティングを導入、国内大手車載機器メーカーが車載機器IoTハードウェアのセキュリティ診断コンサルティングを採用。パートナーシップでは、エンドポイント保護やEDRで提携するクロスポイントソリューションのほか、バリオセキュア、Sky、加賀FEIなどとのパートナーシップを発表。
「エフセキュアの地域別売上で『その他』としている12%のほとんどは、日本からの収益」と述べるマーティン氏は、幅広い業界での実績を積み重ね、各業界での強みを持つ企業とのパートナー提携で地盤を固めてきた成果と強調する。
エフセキュアの2020年における業績
同社の2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR)では、特に検知および対応のマネージドサービスが31.6%と急成長しているという。新プラットフォームF-Secure Elementsの投入で、さらなる加速を目指す。
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