アット東京が2017年から提供しているネットワークプラットフォームサービスの「ATBeX(アットベックス)」。メガクラウド、インターネット、セキュリティ、通信キャリア、国内/海外データセンターなど、顧客システムからさまざまなサービスへの相互接続を、オンデマンドで柔軟に実現できるプラットフォームだ。
そのATBeXは現在、革新的な“未来のデータセンター基盤”を目指してサービスの拡充と機能強化を図っている。ただし、そうした「変わる」進化の裏側には、ノーダウンオペレーションがあってこそ成り立つ安心安全なサービスの提供という「変わらない」部分もある。今回はATBeXを軸として、アット東京の「変わる部分」と「変わらない部分」を見つめてみたい。
アット東京 企画室 主任の曽根ゆう氏、同社 技術・サービス本部 設備構築部 設計グループ 主任の坂内悠太氏
アット東京 技術・サービス本部 業務サービス部 ケーブリングサービスグループ 課長の安本竜也氏、同本部 設備構築部 施工2グループマネージャーの出原達也氏
「ATBeXは、さまざまなサービスへのコネクションを、顧客の要件に合わせて柔軟かつ拡張性に優れたかたちで提供するプラットフォームサービスです」と、アット東京 企画室 プラットフォーム企画部長の杉山智倫氏は説明する。
ATBeXは「AT TOKYO Business eXchange」の略であり、ユーザー企業はATBeXを通じてメガクラウド、インターネットエクスチェンジ(IX)、通信事業者、国内外のデータセンターなど、多様な接続先に閉域接続することができる。論理回線を使った接続サービスのため短期間でネットワークを構築することができ、“使いたいときに使いたいだけ使える”柔軟さと拡張性がメリットだ。
アット東京の「ATBeX」は多様な接続先を有する
2020年には「ATBeX大阪ゾーン」が開設され、アット東京の東京データセンターと大阪データセンターの間も接続できるようになった。さらに、ATBeX経由で接続できる他社提携データセンターも順次、全国に拡大している。
「現在では、データセンター内のラックスペースを利用されるお客さまだけでなく、データセンター外から接続されるお客さま、提携データセンターを利用されているお客さまなど、幅広いお客さまがATBeXのエンドユーザーとなっています。お客さまと多様なサービス、さらにお客さまどうしが『つながる』プラットフォームとして、ATBeXの全国への展開を進めています」(杉山氏)
こうした「つながる」プラットフォーム実現に続く次のステップとして、現在取り組みを進めているのが「未来の企業DXを実現する基盤」としてのATBeXの構築だ。
ここではデータセンター内でニアクラウドサービスを提供するサービスパートナーや、システム構築やネットワーク構築を手がける構築パートナー(SI/NI/CIベンダー)などもビジネスエコシステムに招き入れ、顧客企業が構築したいシステムを迅速かつ容易に実現できるATBeX環境の実現を目指している。
「ATBeX Service Platform」の概要
こうしたDXプラットフォームの構築に向けて、ATBeXでは2020年に「@OS(ATBeXオーケストレータシステム)」を導入したほか、2021年には「ATBeXポータル」も開設している。
@OSは、これまでアット東京のエンジニアが手作業で行っていた、ATBeXを構成するネットワーク機器や接続先サービスの設定変更を自動化/オーケストレーションするシステムである。ATBeXのカスタマーポータルと連携しており、たとえばこれまで2営業日かかっていたAmazon Web Services(AWS)との論理回線構築が、わずか数分で完了するようになっている。
まずはメガクラウド各社との接続自動化からスタートしたが、今後はそのほかのサービスについても順次自動化を進める。顧客からの申請はアット東京のお客さま向けWeb UIであるカスタマーポータルシステムのGUIで受け付けているが、将来的にはカスタマーポータルシステムで顧客向けのAPIを提供して、顧客側の管理システムとの連携も可能にしていく計画だ。
「2021年10月にはATBeX大阪ゾーンでも@OSに対応しました。@OSとカスタマーポータルシステムはアジャイル開発の考え方で構築を進めており、短い周期で新たな機能をリリースして成長させていきます」(杉山氏)
自動化でサービス提供を迅速化する「@OS」と「カスタマーポータルシステム」
こうしたサービスの高度化と改善を続ける一方で、ユーザーに対する情報発信も強化している。それがATBeXポータルだ。ATBeXの各種サービスを利用する際に役立つ情報を、ブログ記事や技術ドキュメント、動画コンテンツといったかたちで掲載している。
アット東京の企画室主任で、パートナーとのリレーションとATBeXポータルの運営を担当する曽根ゆう氏は、「ATBeXのサービスを広く知っていただくのと同時に、現場で使われるお客さまの役に立つ情報発信を心がけています」と語る。毎週更新されるブログ記事は、主にアット東京社員が執筆を担当し、ATBeXの各種サービスを利用するための具体的な設定方法や留意点などが詳細かつわかりやすく説明されている。
また、ATBeXのパートナーどうしで創り出すエコシステムに関する情報発信も重要視しているという。「接続できるサービスの充実度がATBeXの魅力に直結しますから、ATBeXの豊富なパートナーエコシステムをお客さまに知っていただくことに努めています」(曽根氏)。現在は各種パートナーをリスト掲載しているが、今後はさらに提供する情報を強化していきたいと語る。
「ATBeXポータル」からユーザーに役立つ情報を発信こうして新たなステップへの進化を続けるATBeXだが、その革新的なサービスを支えているのは、アット東京が長年培ってきたデータセンター構築/運用/保守の技術とノウハウ、そして高品質なサービス提供のために努力を惜しまない人材だ。
「新しい時代に対応したATBeXのような“攻め”のサービスが提供できるのも、そのサービスを支えるしっかりしたインフラ、さらにそれを安定して構築/運用できるアット東京の技術基盤や人材があってこそだと思います」(杉山氏)
データセンター内通信設備などの設計を手がける設備構築部 設計グループ 主任の坂内悠太氏は、「近年、幹線光ケーブルの増設ニーズが非常に高まっています」と指摘する。ATBeX向けの幹線ケーブルはもちろん、構内配線の冗長化を求める顧客も増えたことで、ケーブル増設工事は増加傾向にあるという。
同様に、構内配線サービスの運用/保守を担当する業務サービス部 ケーブリングサービスグループ 課長の安本竜也氏も、「お客さまにおいて多様な接続性へのニーズが高まっており、それに伴って構内配線サービスの利用が増えています」と説明する。
その一方で、ITにはビジネス変化のスピードへの追随が求められており、サービス提供の迅速化、短納期化へのニーズも強まっている。データセンター内通信設備の施工管理を担当する設備構築部 施工2グループマネージャーの出原達也氏は、「設備工事のスピード感が求められていると感じます」と近年の変化を語る。
インフラ構築/運用/保守におけるトラブルやミスを防ぎ、サービスの安定稼働や信頼性という大原則は厳守しつつ、効率化の工夫によってサービス提供をより迅速化する――。そうした困難な課題に日々取り組んでいるのが、アット東京のエンジニアたちなのだ。
そうした取り組みのひとつとして、アット東京は日本で初めてコーニング社製の超高密度光配線キャビネットを導入し、2021年9月に運用を開始した。この光配線キャビネットは従来の設備と同じ設置面積でおよそ2倍の光配線を収容するもので、幹線ケーブルの増加というアット東京の課題を解消できる。また完全フロントアクセス設計となっており、これまでデッドスペースとなっていた壁沿いへの設置ができるため、サーバールーム内の空間を有効活用することにもつながる。
サービスの安定運用という観点では、ケーブル接続作業時のトラブルやミスを減らす工夫が数多くなされている。光ケーブルの接続部分にはアット東京からの要望でSCコネクタが採用されており、工具なしでも確実な挿抜作業ができる。また、キャビネット内には多数のケーブル留め具が用意されており、色分けや記号表示などで大量のケーブルが整理しやすくなっている。
アット東京が新たに導入した超高密度光配線キャビネット
このキャビネットの導入に際しても、事前に坂内氏や安本氏がコーニング社に出向いてしっかりと試用と検証を行い、作業上のトラブルやミスが発生するリスクを1つずつ排除していったという。
「たとえば作業ミスで光ケーブルが外れる、折れるといった小さな事故であっても、それだけでお客さまのサービスは停止してしまいます。そうしたリスクを少しでも減らせるよう、細心の注意を払って事前の検証を行い、安全性が十分に納得できてから導入をしています」(坂内氏)
こうした地道な努力の積み重ねがあってこそ、データセンターの安定稼働が実現し、顧客は安心してアット東京のサービスを利用することができる。ATBeXを担当する杉山氏は、「データセンター設備の運用力、ケーブリングやネットワークチームの技術力が信頼できるからこそのサービスなのです」と語る。
「ATBeXを先進的なサービスのブランドとして売り出したいと考えても、トラブルが起きるようなサービスではとても『ブランド』にはなりえません。安全安心でなおかつ革新的なATBeXというブランドを、われわれアット東京はワンチームとなって作っているのです」(杉山氏)
(提供:アット東京)
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