次の10年も、考えただけでワクワクする。
2010年代を代表するガジェット、といえば、良くも悪くもスマートフォン一択でしょう。スマホがあったからこそTwitterやInstagram、最近ではTikTokなんていうSNSアプリもこれだけ盛りあがったわけで。あとは、みんながなんでもかんでも写真を撮るようになったのも、スマホからですよね、やっぱり。多くのカメラメーカーが冬の時代を迎えました。
もはや、データ通信の主役は、モバイルです。2018年には世界のデータ通信量で、モバイルがデスクトップを抜きました。今はカフェでコーヒー代を払うのも、車のカギを開けるのも、そして照明の調整やインターネット閲覧にいたるまで、なんでも携帯電話でできる時代。むしろ、「モバイル対応してないなんて、やる価値なし」という風潮になっている気もします(高度なゲームや編集、モデリングは除きますが)。
2019年が終わろうしている今こそ、過去10年間でもっとも話題になった携帯電話(そして、惜しくも1位を逃した特別賞)を振り返ってみたいと思います。
特別賞:Google Nexus One、Microsoft Kin
本来社外秘であるはずの商品情報が、発売日前にリークされてしまったデバイス、といえば…そう、iPhone 4です。PixelでもGalaxy Sでもありません。超ビッグなガジェットの情報が、ここまでダダ漏れしてしまった事例は後にも先にもありません。つまり、それだけ、すごいアイテムだったのです。
iPhone 4は、AppleがRetinaディスプレイやAシリーズプロセッサ、FaceTimeを搭載した最初の携帯電話でした。強化ガラスとステンレス製のメタルフレームを取り入れたデザインも、当時は画期的でしたね。初代iPhoneやiPhone 3Gとは一線を画すアップグレードで、今でも多くの人が「iPhoneといえばこれ」と思い浮かべるような、象徴的なデバイスです。アンテナゲート問題という、最新技術であるがゆえのスキャンダルもありました。いろいろな意味で、iPhone 4は間違いなく、伝説です。
特別賞:Motorola Atrix 4G、Galaxy Nexus
現在は当たり前のように携帯電話の代名詞としても使われる「スマホ」ですが、2010年代初め、こういったタイプのデバイスは「ファブレット(phoneとtabletの合成語)」と呼ばれていました。そのトレンドの祖ともいえる携帯電話が、初代Samsung Galaxy Note.です。
発売当初、Galaxy Noteは「大きすぎて使いにくい」と言われていました。まだ、大きくてキレイなスクリーンにユーザ側が慣れていなかったんですね。Galaxy Noteは、いわば携帯電話業界のキャデラックであり、ロレックス、クリスチャン・ルブタンだったのです。
他のデバイスがまだ、LCDや内臓のスタイラスペン、8メガピクセルの背面カメラ、そして取り外し可能なタイプのバッテリーを使用していた頃、Galaxy Noteはすでに鮮やかなOLEDディスプレイを備えていたのです。初代Galaxy Noteには、2011年当時、みんなが「こんな携帯電話がほしい」と描くものすべてが揃っていました。
特別賞:iPhone 5
2008年、HTC Dreamにはじめて搭載されたAndroidは、もとをたどればカメラ向けのOSとして設計されていました。しかし、「草創期のAndroidスマホで痛い目に遭った」ことがトラウマになり、いまだに敬遠する人も少なくありませんが…(そういえば、Googleが勝手に個人情報収集したと問題になりましたっけ)。そんなAndroidのパワーと魅力がはじめて実証されたのが、このNexus 4でした。
Nexus 4はスタイリッシュで超高速、そして今じゃ当たり前となったQi規格のワイヤレス充電に対応する最初の携帯電話でした。Nexusブランドはその後消滅する運命にありますが、Nexus 5、Nexus 6P、Nexus 7というAndroid端末の道を切り開いたシリーズとなったのです。
特別賞:Nokia 1020、Sony Xperia Z
スマホをデザインという側面で見たとき、HTC One M7のそれはパーフェクトといえるでしょう(今から6年も前なら、なおさらです)。One M7の本体は、当時としては画期的なアルミ製のユニボディ(プラスチックもあちこちに使われていましたが)だったのです。
One M7は高性能デュアルスピーカーを搭載していたほか、ウルトラピクセル技術によって低照度の写真の画質向上にも成功していました。まだ、ピクセルビニングという用語が広まる以前の話です。
結果的に、One M7はHTC史上最高の作品となり、それを超える作品が今日に至るまで発売されていないことが少々残念ではありますが…One M7が2013年で最高の、そして最も印象的な携帯電話であることは間違いありません。
特別賞:Galaxy S5、Galaxy Note Edge、OnePlus One、Moto X
想像してみてください。もしもAmazonが何百万という人と直接つながっていて、我々のポケットの中に永遠の居場所を作っていたとしたら…。それでなくても私たちの買物体験は今やAmazonに支配されているといってもいいほど、強い影響を受けているというのに。
もしAmazonが2014年に売り出したFire Phoneがあそこまでひどくなければ、それは現実のものとなったでしょう。 Fire Phoneの大きなマイナスポイントは、GoogleのアプリやPlayストアが使えなかったため、アプリ利用が非常に制限されていたことです。
また、Fire Phoneには6台ものカメラが搭載されていましたが、写真がきれいに撮れる、というわけではなく、あくまでホーム画面を楽しくしたり、視差効果で遊んだり、Amazonで買い物する際に商品を見やすくするために使われました。
つまるところ、Fire Phoneは電話ではなく、たくさんショッピングしてもらうために作られた高級バーコードスキャナーだったのです。あれから5年、Fire Phoneは未だに「史上最悪のFireデバイス」のタイトルを保持しています。
特別賞:Lumia 950
2010年代半ば、Blackberry Privはある大きな節目を迎えました。携帯電話からキーボードを取り除いたのです。Privは2008年から2010年の2年間、市場占有率約20%を記録。Research in MotionからBlackberry Limitedに社名変更したものの、2015年には市場占有率が1%未満に大幅下落し、スマートフォンのブランド権をTCLに売却してからはスマートフォン業界から姿を消してしまいました。
特別賞:OnePlus 3、Xiaomi Mi Mix、LG G5、Huawei P9、iPhone SE、iPhone 7
Galaxy Note 7は、それまでにない携帯電話でした。Galaxy Note 5から6をすっ飛ばして登場したGalaxy Note 7は、フラッグシップの中のフラッグシップになるはずでした。
SamsungにはNote 7に最新のアイリスセンサーやSペン、大きな5.7インチディスプレイ、巨大な3,500 mAhバッテリーなど、当時の最先端技術が詰め込まれていました。
しかし皮肉なことに、そのバッテリーが発火するという重大事案が発生。アメリカで100件もの火事を引き起こしてしまいました。Samsungは問題に対処するためNote 7を自主回収したのですが、文字どおり炎上はおさまらず。Note 7は飛行機への持ち込みが全面禁止され、機内で「Samsung Galaxy Note7_1097」というWi-Fiホットスポット名が見つかっただけで、あわや緊急着陸という事態にまで発展。
この状況を受け、Samsungはバッテリーの製造規制を再評価せざるを得なくなります。しかしそれが功を奏し、Galaxy携帯電話のバッテリーはそれ以後いっさい問題を起こすことはありませんでした。
特別賞:Blackberry KeyOne、Galaxy S8、Essential Phone、Razer Phone
初代iPhone発売から10年、Appleはこのアニバーサリーにふさわしいデバイスを引っ提げてきました。Touch IDや太いベゼルは消え、ゴージャスなOLEDディスプレイとたくさんのセンサーが詰め込まれたノッチを搭載したiPhone Xは、iPhone新時代の幕開けを告げたのです。
ホームボタンをはじめ、これまでのiPhoneにあったコマンドの多くが排除され、まったく新しいデバイスへと変化しました。しかも、1年間で販売打ち切りというプレミアム感も相まって、アニバーサリーガジェットであるiPhone Xは特別なデバイスとなりました。
特別賞:Oppo Find X、Red Hydrogen One、Huawei P20 Pro
過去2作のPixelで経験を重ねてきたGoogle。Pixel 3にしてようやく、その現代的なデザインとソフトウェアファーストのアプローチが実を結んだようです。
Pixel 3は背面指紋センサー、カラフルなOLEDスクリーン、Qi形式のワイヤレス充電といったコンポーネントを備えているだけでなく、今流れている音楽を「これ誰の曲?」と特定してくれる音楽認識機能のような、こじゃれた機能を併せ持っており、テクノロジーとスマートのバランスが絶妙なデバイスです。
また、PixelのHDR +フォトモードや、Night Sight(デバイスのローンチ直後にリリース)を搭載したことで、Pixel 3のカメラはあらゆる携帯電話メーカーの脅威になるほどの性能を備えたのです。それまでGoogleの携帯電話はただの余興程度に思われている節がありましたが、Pixel 3の登場で競合もウカウカしていられなくなりました。
特別賞:OnePlus 7 Pro、Pixel 3a 史上初の折り畳み式スマートフォンが登場したのは、2018年。そのときはまだ、少々時期尚早だったようで、評価は散々(ゴミよばわりされることも)でした。しかし2019年、Samsung Galaxy Foldの登場により、「折り畳み式のスマホありかも」というムードが高まりました。
Galaxy Foldはまだまだパーフェクトとは言いがたく、価格2,000ドルも悪夢のような高価格です。それでも、7.4インチのフレキシブルなOLEDディスプレイを搭載したことによって、これ1台でタブレット、電子リーダーなど、何役もこなせるパワーを手に入れたのです。
飛行機や電車、バスで映画を見るときなんかは、Galaxy Foldに勝るデバイスはこの世に1つもないでしょうね。 強化ガラス製のスクリーンを備えた通常のスマートフォンがすぐに消えることはないでしょうが、Galaxy Foldは携帯電話のまだ見ぬ可能性の一端を示してくれました。
次の10年、電話技術はさらなる飛躍を迎えると思われますが、そんな未来につながる可能性を秘めたデバイスは、Galaxy Foldを置いて他にないでしょう。