【司会】まず、Fusion 360の特徴についてお話いただけないでしょうか。
【藤村】世の中には、いろいろな3D CADがありまして、もうそれは何十もの種類があります。その中には、数百万円するものもあれば、無料のものもあって、当然できることにも大きな違いがあります。
まず、どのくらいのことがFusion 360でできるかと言いますと、現行で販売されている3D CADのミドルレンジクラスのちょっと下くらいまでのことはほぼできます。100万円前後の3D CADのことをだいたいミドルレンジと言いますが、この辺の3D CADでは、通常、オプションの機能を追加購入して拡張することができるんですが、Fusion 360は最初から全ての機能が入っています。
2つ目のアドバンテージが価格です。ミドルレンジの3D CADは100万円前後とお伝えしましたが、Fusion 360のBasicパッケージが3万円前後、Ultimateという上位バージョンでも12万円です。ここからが実は今回の企画にも響くんですけども、個人利用や趣味、学生、教育機関、非営利系のユーザーなら、基本的に無償で利用できますので、今まで3D CADってやってみたかったけど、高くて買えなかったとか、今無償の3D CADを使っていて、もうちょっと高機能なものにステップアップしたいんだけど、やっぱり買えないとか、そういう方にも最適です。
今、デジタル技術を活用したものづくりが非常に話題になってます。そこにソフトメーカーとして何ができるかと言うと、やはりソフト面での支援になるので、そういったところも踏まえて、価格と機能のバランスを壊していったのです。と言っても、ポジティブな意味ですけれども。そこも大きな特徴です。
基本的なモデリング、つまり設計において、寸法を入れて、複数のパーツがあって、それを組み合わせる、こうしたことは全てできます。さらに、PCケースみたいなものを作る場合は、板金機能(シートメタル)が欲しくなりますが、今年(2016年)中に板金機能も実装される予定なので、PCケースそのものも全部作れるくらいの機能が入っています。
それから、通常の3D CADは、寸法を入れて作っていくという流れなんですけれども、スカルプティングの機能があります。これはどういうものかと言いますと、曲面的なモデリングがすごくしやすい機能です。粘土のような感覚で、引っぱったり、押したり、こういった直感的なニュアンスでモデリングができます。今まで3D CADをやろうとすると、ツールを覚えて、それをどういうところに使うかというのを覚えて、1個1個使えるツールを増やしていかないと、なかなか思った形にできなかったのですが、スカルプ機能を使うと、ツールを5つぐらい覚えていただければ、むにゅむにゅと粘土のように作っていけるというのが特徴です。
さらに、クラウドに本格的に対応しているというのも大きな特徴です。Fusion 360で作成した3Dデータは、クラウド上に保存されますので、他のマシンからでもすぐに作業の続きが可能です。CPU負荷が高いレンダリング処理も、クラウドのサーバーのパワーを使って高速に行なえます。
【司会】3D CADの応用範囲は非常に広いと思いますけれども、個人が趣味の範囲で使う時には、どういう用途が考えられるのでしょうか?
【藤村】Fusion 360は、ユーザーの幅がとても広いということが特徴でして、今まで3D CADと言うと、設計者が使うツールというイメージで、個人での利用は、3D CGに近いソフトの方が多かったんですね。でも、Fusion 360は前述のとおり3D CG的な使い方もできます。
それで、個人の方では、ホビー系の用途が多いですね。例えば、プラモデルとかチョロQのカスタマイズとか、そういう自分が作りたい趣味のモノを作るというものです。今後伸ばしていきたいのは、やはりマスマーケットということで、コスプレの小道具を作ったり、要は実際にものづくりをして、アウトプット用途を訴求したいと考えています。
3Dプリンタを使うとなると、どうしても3Dデータが必要ですので、すでにCADを使っている方々が非常に多いです。会社の仕事でも設計をしていて、高い3D CADを使っているけども、自宅で何か作ろうと思ったときに、300万円の3D CADは買えないので、Fusion 360でやってますという方がいます。それから、デザイン事務所の方でも、価格も安く、自分達にはこれで十分だといってFusion 360を使っておられたりとか、ユーザー層はかなり幅広いですね。
【司会】実は意外と趣味に近いところで使えるということですね。
【藤村】私もPCを自作しますが、本当は自作キーボードとか、自作マウスとか、そういうのも作りたいですね。マウスぐらいだったら、ばらして自分の手をスキャンするなり、型を押した粘土をスキャンするなりして、自分の手にピッタリ合うマウスを作ることもできると思います。何か作りたいと思ったら、Fusion 360で大体できると思います。