Apple Pay上陸の今、改めておサイフケータイを見直してみた

日本でもApple Payが始まり、筆者も早速手持ちのカードをWalletアプリに登録した。Suicaはカードを買って準備していたが、エラーで取り込みができず、仕方なく新規発行した次第だ。スタート時のSuicaのトラブルはかなり残念で、もう少し対策の取りようがあったとは思うが、iPhoneでもようやく非接触決済ができることは素直に歓迎したい。

一方で、このコーナーで何度も紹介してきたように、筆者のメイン端末はGalaxy S7 edgeだ。本当はすぐにでもSペンが使えるGalaxy Note7に買い替えようと思っていたのだが、発火問題を受け、国内での発売も見送られてしまった。今後の経緯を見守るためにも、秋冬もGalaxy S7 edgeを継続利用していくつもりだ。このGalaxy S7 edgeも、おサイフケータイに対応している。

Apple Payが始まった今、改めておサイフケータイを見直してみると、同じFeliCaチップで実現しているサービスとはいえ、やはり違いは大きい。Apple PayのようにiDやQUICPayの発行がスムーズにできなかったり、機種変更時にサービスごとの移行手続きが必要だったりと、レガシーな仕様がそのまま残されているところは目につく。こうした点は、ライバルの登場に合わせて、ぜひ改善してほしいポイントだ。

ただ、おサイフケータイが全面的に劣っているかというと、そうでもない。筆者が利用しているサービスで言えば、ANAの「SKiP」もおサイフケータイの仕組みで実現しているサービスで、あらかじめ搭乗券を登録しておけば、タッチするだけで飛行機に乗ることができる。そのまま手荷物検査場に行き、スマホをタッチするだけでいいので、チェックインカウンターに並ぶ必要もなく、より電車感覚で搭乗可能だ。こうしたチケットサービスは、Apple Payで実現できていないことと言える。

筆者は利用していないが、EdyやWAONなどのプリペイド式電子マネーに対応していることをメリットに感じる人もいるだろう。また、おサイフケータイも開始時からは着実に進化しており、今でおサイフケータイアプリから、複数サービスの残高を確認できたり、NFC決済サービスと相乗りする形で海外で利用できるなど、利便性は確実に向上している。始まったばかりのApple Payと比較するのは酷な話ではあるが、10年以上の積み重ねによるサービスの幅の広さはおサイフケータイの魅力となっている。

支払い時の仕様に関しては、一長一短といったところ。Apple Payはホームボタンをダブルクリックすると、そのままTouch IDで指紋を読み取り、決済が可能な状態になる（Suicaで改札を通過する場合などはかざすだけでOK）。一方のおサイフケータイは、カードエミュレーションの形を取っており、iDでもQUICPayでも、基本的には決済可能な状態になったあと、端末をかざすだけでよく手軽だ。

セキュリティが心配な向きにはApple Payの方がいいし、手軽さを求めるならおサイフケータイの方がいいと言えるかもしれない。ただし、10年以上おサイフケータイを使い続けてきた身からすると、これまでiDが不正に読み取られて利用されたことは1回もない。仮に端末を紛失した際には、すぐに遠隔ロックをかけられる仕様になっており、iDなどのカードに関しては、サービス側での利用停止もできる。とは言え、紛失、盗難の直後に使われてしまうおそれはあるため（補償もあるが）、より確実で安心なのはApple Payと言えるかもしれない。

理想的には、Apple Payという競争相手が生まれたことで、おサイフケータイ側もより進化してほしいというのが、筆者の本音だ。上記のようにメリットはあるものの、たとえば、Apple PayでiDを設定するスムーズさを見たあとだと、やはりおサイフケータイのiDは手続きが煩雑に感じる。10年以上が経ち、古くなってきたおサイフケータイの仕様を見直すべき、格好のタイミングとも言えるだろう。

Galaxy S7 edge特有の話をすると、サムスンが一部海外で提供している「Samsung Pay」にもぜひ対応してほしい。これはNFC決済と磁気決済を融合したウォレットサービス。非接触決済が使えるのと同時に、磁気を発することで、既存のカードリーダーでもそのまま決済できるのが最大の特徴だ。

Apple Payもおサイフケータイも、FeliCaやNFCという非接触決済の通信に依存しているため、専用のリーダ・ライターが必要になり、利用できるシーンが限られてくる。Samsung Payであれば、クレジットカードが使えるお店が広く対応でき、使える場所が一気に広がる。スマホで決済というと、どうしてもFeliCaやNFCにとらわれがちだが、Samsung Payのような仕組みが日本に上陸することもひそかに期待している。