その一方で、写真にとってとても重要な要素である撮影日時の記録については、とても中途半端な状況が続いている。
個人的に写真を撮るさいには、その写真を撮る場所の時刻にカメラを設定する。この方法の欠点は、夏時間を採用している地域において、冬から夏への切り替え時に同じ時刻がもういちど繰り返されること、夏から冬への切り替え時に空白の1時間ができてしまう点だ。また、渡航先ですぐに切り替えればいいのだが、それを忘れて最初の数枚に別の地域の時刻を記録してしまうこともある。日本に戻ったときも時刻の戻し忘れはしゅっちょうだ。
これを回避するには世界で一意の時刻、つまりUTCに設定しておくのがいい。いわゆる協定世界時だ。この時刻で、設定された場所のタイムゾーンをもとにその場所の時刻を計算してくれるような仕組みになっていれば混乱することはない。
ところが写真のメタデータ規格としてのEXIFは時刻を絶対的なものとして記録し、タイムゾーンの情報を記録しない。最近はそれを記録するカメラもあるようだが、有効には活かされていないようなのだ。カメラの設定にはタイムゾーンの設定があるのだが、それはカメラの時刻の見かけ、すなわち、そのタイムゾーンでは今何時なのかを切り替えるだけのものにすぎない。夏時間か冬時間かも自分で記録する必要がある。
最近のカメラはこのあたりの使い勝手が多少はあがっている。たとえば愛用のニコンD5600やD850はSnapBridgeというスマートフォン用のアプリを使い、カメラからスマートフォンに撮影した画像をBluetoothで転送してくれる。200万画素程度にリサイズする機能もあり、重宝しているのだが、このアプリにはスマートフォンの時刻情報、位置情報を取り込み、写真に埋め込む機能が装備されている。
ご存じのように、スマートフォンは場所を移動して最初にモバイルネットワークにつながったとき、その場所での時刻情報を自分自身に自動設定する機能を持っている。だから、飛行機が目的地の空港に着陸し、スマホの機内モードを解除したとたんにスマートフォンの時刻が変わる。そのスマートフォンをカメラと接続して写真を撮れば、カメラの設定を手動変更することなく、現地の時刻がカメラに記録されるわけだ。これでついうっかりのミスもなく、カメラは現地の時刻、そして位置情報を正確に写真に埋め込んでくれるのだ。