「初期のKindleはWi-Fiすら搭載していなかった」と聞くと驚く人もいるのではないだろうか。通信回線を内蔵し、PCレスでコンテンツを購入できることを掲げて登場したKindleだが、本体に搭載しているのはHSDPA回線のみで、Wi-Fiは搭載していなかった。
このモデル、つまり初代「Kindle」が海外で登場したのは2007年11月だが、当初は爆発的に売れたわけでもなく、また日本国内から入手する方法がなかったこともあり、日本から見ると対岸で何か起こっているという程度でしかなかった。どちらかというとAmazonが自前でハードウェアを投入してきたことのほうが、当時は話題になっていた記憶がある。
初代のKindle。このモデルのみ技適を取得しておらず、国内では通信回線をオンにできない。これは後年になって筆者がAmazon.comのマーケットプレイス経由で入手した個体下方向から見たところ。本製品の特殊な形状がよくわかる上方向から見たところ。個性的な形状の評判はあまりよくなかったようで、後継モデルからはシンプルな形状に改められている電源スイッチに通信スイッチと、やたらと物理キー/スイッチを備えるのが特徴。アルファベットがモールドされた背面カバーも独特の意匠だ「Kindleはメモリカードに対応しない」と言われるが、じつは初代モデルはSDカードスロットを搭載している。バッテリーが交換式なのも面白い画面右下に搭載されているホイールを回すと、銀色のマークが上下に移動し、ホイールを押し込むことによってその左側にある項目が選択される仕組み。1世代限りで廃止された、あまりにも独特すぎる仕様だ最新モデルであるKindle Oasis(第9世代)との比較。ここまで面影がないのも珍しい【動画】初代の「Kindle」(左)と、最新の「Kindle Oasis(第9世代モデル)」(右)でページめくりを同時に行なった様子。反応速度の差は一目瞭然だKindleが日本でも本格的に話題になり始めたのは、翌年発売された第2世代のモデルからだ。まだ日本語の表示はできなかったものの技適を取得しており、日本からも直接注文することができた。また、ほぼ同じタイミングで大画面モデルであるKindle DXが登場し、こちらも注目を集めた。
当時はまだiPadのブームよりも前で、E Ink電子ペーパーを採用し、PDFの表示も可能なデバイス自体が珍しかったこともあり、多くのユーザーがAmazon.comから直接購入するに至った。筆者が初めてKindleに触れたのもこのタイミングで、本誌に全3回にわたってレビューを書いている。
その翌年には、のちにKindle Keyboardと改名される「Kindle 3」、さらにその翌年には「Kindle 4」に加えて、初のタッチスクリーン搭載モデル「Kindle Touch」が登場した。今ではKindle=タッチスクリーンというのは当たり前だが、この「Kindle Touch」以前は、ページめくりはボタン、項目選択はハードウェアキーで行なう仕様だったのだ。これも今の姿からは想像しづらい。
Kindle 2(左)、Kindle DX(中)、Kindle 3(右)。Kindle 3はその後Kindle Keyboardと名前を変えて第4世代モデルの登場後もしばらく併売された。またKindle DXも後継機こそ出なかったもののロングセラーとなったKindle 4(左)、Kindle Touch(中)。いずれも第4世代モデルで、Kindle Touchは初めてタッチスクリーンを搭載したモデルとなる。右端はその翌年に発売された第5世代モデルのKindle Paperwhiteこの頃になると、そろそろKindleが近々日本に上陸するのではという、予測とも願望ともつかない噂が各方面からささやかれ始めた。ちょうどタイミングよく、タッチスクリーン搭載でソフトキーボードによる言語切替が容易な「Kindle Touch」が登場したことで、日本上陸の噂はますます信憑性を持って語られるようになった。
しかし結局このKindle Touchは日本語対応を果たすことなく、その翌年に発売された「Kindle Paperwhite」が、ほぼ時を同じくしてオープンした日本版Kindleストアで利用できる、第1号のKindle端末となった。「Kindle Paperwhite」はその後ほぼ同じ筐体のままモデルチェンジを繰り返し、現在に至っている。
そこから2017年10月発売の第9世代モデル「Kindle Oasis」まで、ほぼ年1回のペースで新製品の投入が行なわれており、ちょうどこの2017年の年末が、Kindle登場から10周年、日本上陸からは5周年を迎えることになる。ちなみに国内でこれまで販売されたKindle端末の見分け方については、こちらのページにまとめられている。
日本版Kindleストア向けの初の端末となったKindle Paperwhite(左)。これは第5世代モデルで、その後第6世代(中)、第7世代(右)とほぼ同じ形状のまま現在に至るまでロングセラーとなっている第5世代モデルのみ、背面のモールドが「Amazon」ではなく「Kindle」となっている。敢えてボディデザインは変更せず、一部のモールドだけを変更するというのは、一般的なメーカーの感覚からすると珍しい低価格モデルである「Kindle」。左が第7世代、右が第8世代Kindle 4でいったん廃止されたページめくりボタンは、高級路線であるKindle Voyage(左)で復活。第8世代Kindle Oasis(中)および第9世代Kindle Oasis(右)は、上下対称のページめくりボタンを採用するページめくりボタンの形状の変遷。左から、初代Kindle、Kindle 2、Kindle 3、Kindle 4、Kindle Voyage、第9世代Kindle Oasis。初代を除いたほとんどの機種は、2つ並んだボタンの下が「進む」、上が「戻る」に割り当てられている