4Gと3Gのデュアルスタンドバイに対応した「Moto G4 Plus」で、日本のSIMフリースマホ市場への本格参入を開始するモトローラ。世界で最初に携帯電話の販売を開始した同社だけに、スマホもこれまで数多くの製品を輩出してきました。
その中には今では考えられないようなデザインの端末も少なくありません。また、QWERTYキーボードを搭載した製品も数多くリリースしています。今回はそんな同社のスマホの歴代製品の中から、「変態認定」できるちょっと変わった製品を紹介しましょう。
縦にも横にも開くQWERTYキーボード搭載スマホ「MPX300」
フリップスタイルなのに縦にも横にも開く「Wオープンスタイル」と呼ばれるケータイが2006年ごろ、日本でいくつか発売されました。それと同じ機構をQWERTYキーボードで採用したという「MPX300」は、あらゆるスマホの歴史の中で、トップ3に入る変態スマホと呼べる製品でしょう。
発売は2004年と日本のWオープンスタイルケータイよりもはるかに昔。OSはWindows Mobile以前のMicrosoft Pocket PC 2003 SE。閉じた状態は横幅のちょっと広い、クラムシェル型の端末ですが、この上ブタ部分が上にも横にも開くのです。
縦に開けば(ちょっと強引な)ケータイスタイル
横に開けばQWERTYキーボードを備えたスマホスタイルに変身
特殊なヒンジ構造により、縦にも横にも開けます。ディスプレーはタッチパネルで、スタイラスペンを使って操作もできます。キーボード部分は縦でも横でも使えるような特殊な配列で、十字キーの回りに10キーを並べつつ、そのキーを含む全体が横方向にQWERTY配列になっているという複雑なキーマップ。
いまの時代ならこんなことをするくらいならソフトキーに逃げちゃうでしょうね。こんな端末を実際に製品化してしまうなんて、モトローラの製品開発力はこのころからタダモノでは無かったのです。
モトローラQWERTYキーボード端末の祖先「V100」
モトローラ、エリクソン、ノキアが世界の携帯電話のシェアのトップ争いを行なっていた2000年、モトローラは意欲的な端末を発売しました。ブルーのトランスルーセントカラーのボディーは当時トレンドとなったiMacの影響を受けたものでしょう。モノクロ126×64ドット、わずか7行表示のディスプレーを搭載した製品でしたが、QWERTYキーボードを備え快適にSMSを打つことができたのです。
音声通話をするためにはヘッドセットが必要。SMSの利用に特化した、いまでいえば「ソーシャルケータイ」とも言える製品でした。日本ではちょうどiモードの普及が進んだころでメール利用が当たり前になっていきましたが、海外は携帯電話のテキストコミュニケーションは、SMSが主流だったのです。
ちなみに、このころの製品にはメーカーの公式写真はほとんど無く、この写真はモトローラの年次報告書に出ていたもの。そこに掲載されたということは、当時は戦略的な製品だったということでしょう。
開けばキーボード、閉じればケータイの「A630」
ケータイ側のカメラはVGA、デジタルズームも可能
このV100はその後モデルチェンジを行ない、2004年には閉じた状態で普通のストレートケータイとしても使える「A630」に進化しました。QWERTYキーボードを備えますが、機能はSMSとメール、そしてWAP(当時のモバイルインターネット)程度。それでも背面のVGAカメラを使って撮影した写真を即座に送れるなど、そのころのモバイルコミュニケーションを思う存分楽しめる製品でした。
ディスプレーも176×220ドット、8行表示とV100より大型化されています。といってもサイズは1インチ弱で、いまとなってはとても小さいのですけどね。
モトローラも出していたBlackBerryスタイル「Moto Q8」
モトローラの過去のスマホを振り返ってみると、実はQWERTYキーボードを搭載した製品も多数販売されています。AndroidスマホだけでもQWERTYキーボード搭載機は派生モデルも含めると30機種以上、そしてその中にはBlackBerryスタイルの縦型QWERTYキーボード端末も10機種以上が存在します。
そして、Android以前にもモトローラは同スタイルのスマホを出していました。それが「Moto Q」シリーズです。OSはMicrosoft Windows Mobile 6.0/6.1 Standard Editionで、ディスプレーは非タッチパネル。2005年の「Moto Q8」、2007年の「Moto Q 9h」、そして2008年の「Moto Q 11」と3モデルが発売されました。
他社の同型モデルよりもデザインはちょっとオシャレ
スタイリッシュなボディーはBlackBerryの対抗製品としてビジネスパーソンを対象としつつ、ブルーのアクセントカラーを本体に入れるなどデザイン端末として若い世代をターゲットにも販売されました。
中国ではFacebookなどのスタンプでおなじみ、脱力系うさぎの「Tzuki」のキャラクターをMoto Qの広告に採用、メールを使ったリッチコミュニケーションの浸透を図ったモデルでもありました。
Androidスマホも変態ぞろい! QWERTYキーボード端末ならモトローラに任せろ
さて、2009年にようやくスマホOSをAndroidに一本化。その年発売の数モデルのうち、フラグシップとして大きくアピールしたのはスライド式QWERTYキーボード搭載の「Motorola Milestone」でした。タッチパネルだけのiPhoneに対抗すべく、打ちやすいキーボード、そしてセキュリティー対策用の指紋認証センサーを搭載する意欲的なモデル。アメリカでは「Motorola DROID」として大ヒットした製品です。
そしてほぼ毎年、モトローラはQWERTYキーボード搭載モデルを出しつつ、ギミックやデザインがおもしろい「変態QWERTYキーボードスマホ」を次々に出してくるのです。それらのいくつかをピックアップしてみましょう。
キーボードが裏側から回転して出てくる「Backflip」
QWERTYキーボードをスライド式ではなく本体の裏側からヒンジで回転させる構造の「Backflip」。構造上本体の厚みが増してしまいますが、このままジーンズのポケットにラフに入れて椅子に座っても、誤って本体を折り曲げて破損してしまう心配が無くなります。カジュアルなQWERTYキーボード端末という位置づけの製品。2010年発売。
正方形の画面の裏側のキーボードがくるっと出てくる「FlipOut」
こちらも若い世代をターゲットにした製品。コンパクトな正方形のディスプレーのスマホで、必要な時だけ裏側のキーボードを回転させると縦型のQWERTYキーボード端末になるというギミックが楽しいスマホ。2010年発売。
トラックパッドが付いた片手持ちスマホ「Flipside」
正統派の横型スライド式QWERTYキーボードを備えながら、ディスプレーの下のホームボタンの場所に正方形のタッチパッドを搭載。閉じた状態でも画面をタッチせず、親指タッチパッドをタップして片手操作できるのが売り。2010年発売。
ノートPC型のドッキングステーションを利用できる「Atrix」
11型のノートPCのように利用できる
2010年のモトローラは他社がやらないギミックやスタイルを何でもやってしまおう、というくらいアグレッシブな製品を次々に送り出していたんです。
そして、この「Atrix」は2011年1月に発表。CPUやメモリーを持たないディスプレーとバッテリー、そしてキーボードを内蔵したノートPCスタイルのドッキングステーションが利用可能。これはいま出しても受けること間違いなし!……と思うんですよね。
そろそろQWERTYキーボードスマートフォンの再登場を期待
モトローラのQWERTYキーボード搭載スマホは2012年を最後に製品は出てきていません。2012年と言えばグーグルがモトローラを買収した年で、グーグルとしてはAndroidのリファレンスデザインとなる製品を、モトローラに求めていたのかもしれません。
しかし、いまやモトローラはレノボの傘下となっています。スマホの差別化が年々難しくなっている時代だけに、変態系は無理としても、QWERTYキーボードを搭載したモトローラ製スマホの復活を期待したいものです。