ファーウェイ・ジャパンは、同社の最上位シリーズに位置付けられるMateシリーズの最新モデル「HUAWEI Mate10 Pro」を発売しました。実売価格は9万6984円。筆者の記憶に誤りがなければ、日本で発売されるSIMフリーのAndroidスマホの中では最高クラスの額です。しかし、従来ファーウェイのスマホは、ハイスペックながら他メーカーのスマホよりもお手頃で、コスパが高いという印象がありました。Mate 10 Proには、その価格にふさわしい性能を備えているのか? むしろお買い得なのか? 発売間もない注目端末をしっかりとレビューしていきたいと思います。
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Mate 10 Proは約6.0インチのOLED(有機EL)ディスプレイを搭載。画面アスペクト比は18:9で、解像度は2160×1080ドット。フルHD(1920×1080ドット)の横幅はそのままに、縦に伸ばした印象です。
サイズは約H154.2×W74.5×D7.9mmで、重さは約178g。ちなみに、5.5インチ画面のiPhone 8 Plusの横幅は78.1mmで、5.8インチ画面のiPhone Xは70.9mmなので、ちょうどその中間くらい。ファーウェイによると、Mate 10 Proの画面占有率は81.61%でiPhone X(81.36%)より高く、画面の面積も16%ほど広いそうだ。大画面と持ちやすさを両立させたサイズ感といっていいでしょう。
筆者は、昨年来、HUAWEI P9 → HUAWEI P10 Plusと、ファーウェイの歴代ハイエンドモデルを使っていますが、新モデルのMate 10 Proで、個人的に高く評価しているのがデザインです。背面パネルはフィルムとガラスを5層に重ね、シックな色合いながら美しい光沢を生み出しています。
ここ最近、ミドルクラス以上のスマホは、プラスチック素材を用いることが減り、ガラスやアルミニウム合金の使用が増えています。ハイエンドモデルでは、さらにリッチ化が進み、独特の手触り感や深い色合いなど、高級品だけが持つ質感を競うフェーズに入っているように思います。Mate 10 Proは、落ち着いた色合いながら、鏡のように反射し、触れているだけで心地よい手触り感が得られます。そのまま使いたいところですが、汚さないようにケースに入れようかと悩むことになりそう。
ボタン配置はベーシックなので、他メーカーのスマホから乗り換えた人にもわかりやすく作られています。指紋センサーは背面に搭載。IP67等級の耐水・防塵に対応させたためか、イヤフォンジャックは搭載されておらず、USB-C端子を兼用しています。最大384kHz/32bitのハイレゾ音源の再生にも対応しており、ハイレゾ対応のイヤホンも同梱されていますが、手持ちのイヤホンで聴きたい場合は、同梱の変換アダプタを使う必要があります。
OSはAndroid 8.0で、CPUはKirin 970(2.36GHz×4 + 1.8GHz×4)。このKirin 970には、AI専用のNPU(Neural-network Processing Unit)が組み込まれています。これにより、AIの演算力において、パフォーマンスは従来比で約25倍、電池効率は従来比で約50倍を実現しているとのこと。わかりやすく言えば、いろいろな場面でスピーディーに操作でき、電池も長持ちするというわけです。
Mate 10 Proは、そもそも4000mAhの大容量バッテリーを搭載しているので、電池持ちは良いのだが、筆者が実際に使った印象では、ネットを見たり、写真を撮ったりすることが多いヘヴィユーザーでも余裕で1日持つのではないかと感じました。
Mate 10 Proは、ライカ製のダブルレンズを搭載し、ライカが認める画質で撮影できることもアドバンテージです。
ファーウェイ製のスマホの中では、PシリーズとMateシリーズ(ただし、liteモデルを除く)がライカのレンズを搭載しています。新モデルが出るたびに、性能のアップデートが図られており、Mate 10 Proのカメラの仕様は、1年前に発売された前モデル・Mate 9よりも、今夏に発売されたHUAWEI P10 Plusに近いです。P10 Plusと同様に、背面のメインカメラは1200万画素のカラーセンサーと2000万画素のモノクロセンサーで構成され、デジタル一眼で撮ったかのように、背景をぼかしたり、奥行きが感じられる画質で撮影できます。
従来モデルからの進化点は、まず、レンズのF値が1.6になったこと。ちなみに、Mate 9はF2.2で、P10 PlusはF1.8だったので、1年間で飛躍的に明るくなったといえます。実際に撮影してみると、明るいレンズの威力は絶大。これまで苦手としていた夜景も明るく撮れて、しかも、速いシャッタースピードが得られるので手ブレも起こしにくい。P10/P10 Plusから引き続き、「ポートレート」モードも搭載されているが、薄暗い場所でも、わずかな光を効率的に取り込み、人物の肌を明るく撮れるようになりました。
そして、Mate 10 Proならではの特長といえるのが、AIプロセッサによる機能追加です。1億枚以上の画像学習により、被写体や撮影シーンを瞬時に検知して、最適な設定が自動的に行われる機能が加わり、プロフェッショナルモード(手動モード)を使わずとも、プロが撮ったかのように、いい感じで撮れるようになりました。これまでのスマホにも被写体によって選択できる「シーンセレクト」的な機能を備える機種はあったが、Mate 10 Proは独自のAIアルゴリズムを採用しており、単純に13パターンのプリセットがあるわけではなく、撮影状況によって、背景のボケ度合いなども変わるそうです。
800万画素のフロントカメラにも、ライカのレンズを採用。F値は2.0で、シングルレンズながら、背景を美しくぼかす「ポートレート」モードでの撮影が可能。美肌の度合いを設定することもでき、男子にも役立ちそうですが、不自然な仕上がりになることもあるので、やりすぎは危険だと感じました。
Mate 10 Proを使っていて、最もAIチップのすごさを実感できたのが翻訳アプリ。「Microsoft翻訳」をファーウェイ向けにカスタマイズしたものがプリインストールされているのですが、その使い勝手は「神」と呼びたくなるレベル。マイクボタンをタップして、日本語を話すだけで、設定した外国語に瞬時に翻訳され、ちょっとした言い間違いも補正してくれます。翻訳結果は、リアルタイムで画面に表示され、音声が流れるので、海外旅行などで重宝すること請け合いです。
外国語表記にカメラをかざして翻訳することもでき、反応もびっくりするほど速い。テキスト入力で翻訳したりでき、まだ試していないが会話モードもあるので、外国人へのインタビューにも活用できるのではないかと期待しています。
↑ファーウェイの英語版サイトにカメラをかざして翻訳してみた結果。同様の機能は「Google翻訳」にもあるが、それよりも圧倒的に速い
1週間ほどMate 10 Proを使ってみて、毎日のように活用できたのは、やはりカメラ。筆者は、同じくライカのダブルレンズを搭載するP10 Plusを使っていますが、Mate 10 Proの明るさは段違い。カメラが苦手とするシチュエーションでも、効率よく光を取り込むので、実際よりも明るく、しかもナチュラルな色味で撮れるのが魅力。P10 Plusの発売時の実勢価格は7万8624円(税込)だったので、1万8360円高くなりましたが、その差額以上の価値があるように感じました。
Mate 10 Proは「DSDV」に対応していることも注目されています。これは「デュアルSIM・デュアルVoLTEスタンバイ」の略。これまで、SIMフリースマホのハイエンドモデルは、DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)が主流でした。DSDSは2枚のSIMを挿せて、1枚は2G・3G・4Gに対応し、もう1枚は2G・3Gに対応する仕様。データ通信に4GのSIMを使い、音声通話は4Gと3Gの両方で待ち受けするという使い方が一般的でした。日本だけでなく、海外でも4Gが普及しており、今後、DSDVが主流になっていくことは間違いありません。海外に出かける機会が多い人や、スマホを長く使う想定の人は重視すべき機能でしょう。ただし、日本国内で使う場合、ソフトバンクのVoLTEにしか対応していないので注意が必要です。
今冬買えるスマホとしては、Mate 10 ProがiPhone XやGalaxy Note 8と並ぶ超ハイエンドモデルであることは間違いありません。MVNOでのSIMとのセット販売では割引が適用されることもあります。お得な格安SIMで、長期的に使うのであれば、妥当な価格設定といえるでしょう。
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